ゼペリン点眼液（一般名：アシタザノラスト水和物）は2000年から発売されている点眼液（目薬）です。
アレルギーを抑えるはたらきを持つ「抗アレルギー薬」であり、主に花粉症で生じるような目の充血やかゆみなどに用いられています。
抗アレルギー点眼薬にもいくつかのお薬がありますが、その中でゼペリンはどのような特徴のあるお薬で、どのような作用を持っているお薬なのでしょうか。
ゼペリン点眼液の特徴や効果・副作用について詳しく説明していきます。
１．ゼペリンの特徴
まずはゼペリン点眼液の全体的な特徴について紹介します。
ゼペリンはヒスタミンのはたらきをブロックすることでアレルギー症状を抑える目薬です。ソフトコンタクトレンズを装着したまま点眼しやすいという利点があります。
ヒスタミンはアレルギーを引き起こす原因となる物質（ケミカルメディエーター）の1つです。そのため、このヒスタミンのはたらきをブロックする事ができればアレルギー症状を抑える事が出来ます。
これを狙っているのがゼペリンをはじめとした「抗ヒスタミン薬」です。
ゼペリンは主に「抗ヒスタミン作用」によってアレルギー症状を抑えますが、それ以外のケミカルメディエーター（ロイコトリエンや血小板活性化因子など）を抑えるはたらきもあり、これによってよりしっかりとアレルギー症状を抑えてくれます。
またソフトコンタクトレンズを変形させる可能性のある防腐剤である「ベンザルコニウム塩化物」を含んでいないため、ソフトコンタクトレンズ装着下でも点眼しやすいという特徴があります。
ちなみに「点眼できる」ではなく「点眼しやすい」と書いたのは、メーカー的には「ソフトコンタクトレンズを付けたまま点眼して問題ないですよ！」と明記はしていないためです。しかし現状としては、通常量の点眼であればソフトコンタクトレンズ装着下でまず問題はありません。
点眼液（目薬）は「目」という局所のみに効かせる事が出来るため、その部位にのみ効きます。お薬の成分がほとんど全身に回らないため、全身性の副作用が少ないのも利点です。
以上から、ゼペリン点眼液の特徴として次のようなことが挙げられます。
【ゼペリン点眼液の特徴】
・眼に生じたアレルギー反応（充血やかゆみなど）を抑える作用を持つ
・ヒスタミンをはじめ、その他のケミカルメディエーターのはたらきを抑える
・局所（目）にしかほとんど作用しないため、副作用が少ない
・ソフトコンタクトレンズ装着下でも点眼しやすい
２．ゼペリンはどのような疾患に用いるのか
ゼペリンはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には次のように記載されています。
【効能又は効果】
アレルギー性結膜炎
アレルギー性結膜炎とは、眼の結膜（いわゆる「白目」の部分）にアレルギー反応が生じてしまう状態です。アレルギー反応は炎症反応を引き起こすため、結膜にアレルギーが生じると結膜炎になります。
代表的なケースとしては、花粉症で生じるアレルギー性結膜炎が挙げられます。
花粉症では「花粉」というアレルギー物質（アレルゲン）が結膜に付着する事で、結膜にアレルギー反応が引き起こされます。
これを抑えてくれるのがゼペリン点眼液になります。
ゼペリンはアレルギー性結膜炎に対して、どのくらい有効なのでしょうか。
患者さんの自覚症状や他覚所見（目のかゆみ、結膜充血、結膜浮腫など）を元に、ゼペリン点眼液を使用した前後の症状の経過を総合的に5段階（著明改善、改善、やや改善、不変、悪化）で評価し、「改善」以上を有効と考えた場合、ゼペリンのアレルギー性結膜炎に対する有効率は69.0％と報告されています。
３．ゼペリンにはどのような作用があるのか
ゼペリン点眼液はどのような作用機序によって、アレルギー症状を抑えてくれるのでしょうか。
ゼペリンの作用について詳しく紹介させて頂きます。
Ⅰ．抗ヒスタミン作用
ゼペリンは抗ヒスタミン薬というお薬に属し、その主な作用は「抗ヒスタミン作用」になります。これはヒスタミンという物質のはたらきをブロックするという作用です。
アレルギー症状を引き起こす代表的な物質に「ヒスタミン」があります。
アレルゲン（アレルギーを起こすような物質）に暴露されると、アレルギー反応性細胞（肥満細胞など）からアレルギー誘発物質（ヒスタミンなど）が分泌されます。これが受容体などに結合することで様々なアレルギー症状が発症します。
ちなみに肥満細胞からはヒスタミン以外にもアレルギー誘発物質が分泌されますが、これらはまとめて「ケミカルメディエータ―」と呼ばれています。
ゼペリンのような抗ヒスタミン薬は、アレルギー反応性細胞からヒスタミンが分泌されるのを抑える作用があります。またヒスタミンが結合する部位であるヒスタミン受容体をブロックする作用もあります。
これらの作用によりアレルギー症状を和らげてくれます。
Ⅱ．抗ロイコトリエン作用
ヒスタミン以外のケミカルメディエーターとして、ロイコトリエン（LT）があります。
ロイコトリエンも肥満細胞から分泌され、身体にアレルギー反応を起こしたり、気管を収縮させたりします。
ゼペリンは、ヒスタミンと同じようにこのロイコトリエンの分泌を抑えるはたらきがあります。また、すでに分泌されてしまったロイコトリエンのはたらきをブロックする作用も持ちます。
これによってアレルギー症状を緩和させてくれます。
Ⅲ．血小板活性化因子拮抗作用
血小板活性化因子（PAF）は、血小板を活性化させることで凝集させたり、血管を拡張させたりするための物質ですが、気管支喘息などのアレルギーを誘発する物質の1つでもあることが明らかになっています。
ゼペリンはPAFのはたらきもブロックすることが確認されており、これによってもアレルギー症状を緩和させると考えられています。
４．ゼペリンの副作用
ゼペリンにはどんな副作用があるのでしょうか。また副作用の頻度はどのくらいなのでしょうか。
ゼペリンの副作用発生率は1.17%と報告されています。眼という局所にしかほぼ作用しないお薬ですので、副作用は多くはありません。
生じうる副作用としては、
- 眼の刺激
- 眼痛
- 流涙増加
- 眼瞼炎（眼瞼皮膚炎を含む）
- 眼瞼浮腫
とほとんどが眼局所の副作用になります。
程度も軽いものがほとんどで、多くは様子を見るか点眼を中止すれば自然と改善していきます。
ただしあまりに症状が強いものや自然と改善しないような場合は、処方してもらった主治医に相談し、指示を仰ぐようにしましょう。
５．ゼペリンの用法・用量と剤形
ゼペリンは、
ゼペリン点眼液0.1% 5ml
の1剤形のみがあります。
ゼペリンの使い方としては、
1回1～2滴、1日4回（朝、昼、夕方及び就寝前）点眼する。
となっています。
実際は厳密に1日4回を点眼する必要はなく、ある程度柔軟に考えて頂いて問題ありません。
６．ゼペリンはコンタクトレンズの上から点眼できるのか
点眼液を処方すると、患者さんから良く聞かれる質問があります。
それは「コンタクトを付けたまま点眼して大丈夫ですか？」というものです。
この回答は、
- 「ハードコンタクトレンズは大丈夫」
- 「ソフトコンタクトレンズもほぼ問題なしだが、厳密に言えば推奨はされていない」
というのが答えになります。
ほとんどの点眼液には防腐剤が入っています。もっとも使われている防腐剤に「ベンザルコニウム塩化物」がありますが、ベンザルコニウム塩化物はコンタクトレンズに吸着されてしまうことが知られており、これによってソフトコンタクトレンズを変形させてしまう事があります。
そのため、ベンザルコニウム塩化物を含有している点眼薬は基本的にはソフトコンタクトレンズと併用不可であり、どうしても使用したい場合は点眼してから少し（10分前後）時間を空けてからコンタクトレンズを装着する事が勧められています。
ゼペリンはというと、防腐剤は含まれていますがベンザルコニウム塩化物ではなく、パラベン系（パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル）とクロロブタノールという防腐剤になります。
これらもソフトコンタクトレンズをに悪影響を与える可能性はゼロではありませんが、現状としても問題になる事はほぼないため、「まぁコンタクトをしたまま点眼しても大丈夫でしょう」とする先生も少なくありません。
ただしメーカー的に「ソフトコンタクトレンズ装着下で点眼して問題ありません」と明記しているわけではありません。そのため教科書的な回答としては、、「ソフトコンタクトレンズ装着下では点眼しないのが原則」「どうしても点眼したい場合は点眼を先にして10分程度待ってからコンタクトレンズを装着する」となります。
７．ゼペリンが向いている人は？
以上から考えて、ゼペリンが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。
ゼペリンの特徴をおさらいすると、
・眼に生じたアレルギー反応（充血やかゆみなど）を抑える作用を持つ
・ヒスタミンをはじめ、その他のケミカルメディエーターのはたらきを抑える
・局所（目）にしかほとんど作用しないため、副作用が少ない
・ソフトコンタクトレンズ装着下でも点眼しやすい
といったものがありました。
ゼペリンは効果の面で言えば、他の抗アレルギー点眼液と比べて大きな特徴があるお薬ではありません。他のアレルギー点眼薬と同じようなものの1つという認識でよいでしょう。
違いを挙げるとすれば、やはりベンザルコニウム塩化物を含有していない点になります。これはつまり、「ソフトコンタクトレンズを装着していても点眼しやすい」という事です。
日常でソフトコンタクトレンズを装着していて、花粉症の時期などでもはずすのがなかなか難しいという方には向いているお薬なのではないかと考えられます。
また点眼液は眼のみに作用し、体内にほとんど吸収されないため、眼だけにアレルギー症状が生じている際には良い適応となります。
反対にアレルギー症状が目だけではなく、鼻水も出たりと症状が多岐に渡る場合は、飲み薬を服用するなどして、全身にお薬が効くようにした方が良いでしょう。
