リボスチン点眼液(一般名:塩酸レボカバスチン)は2001年から発売されている点眼液(目薬)です。
アレルギーを抑えるはたらきを持つ「抗アレルギー薬」であり、主に花粉症で生じるような目の充血やかゆみなどに用いられています。
抗アレルギー点眼薬にもいくつかのお薬がありますが、その中でリボスチンはどのような特徴のあるお薬で、どのような作用を持っているお薬なのでしょうか。
リボスチン点眼液の特徴や効果・副作用について詳しく説明していきます。
1.リボスチンの特徴
まずはリボスチン点眼液の全体的な特徴について紹介します。
リボスチンはヒスタミンのはたらきをブロックすることでアレルギー症状を抑える目薬です。
ヒスタミンはアレルギーを引き起こす原因となる物質(ケミカルメディエーター)の1つです。そのため、このヒスタミンのはたらきをブロックする事ができればアレルギー症状を抑える事が出来ます。
これを狙っているのがリボスチンをはじめとした「抗ヒスタミン薬」です。
リボスチンは主に「抗ヒスタミン作用」によってアレルギー症状を抑えますが、それ以外にも好酸球の浸潤を抑えたり、PAF(血小板活性化因子)というアレルギーに関連する因子のはたらきを抑える作用もあります。これによってよりしっかりとアレルギー症状を抑えてくれます。
また点眼液(目薬)は「目」という局所のみに効かせる事が出来るため、その部位にのみ効きます。お薬の成分がほとんど全身に回らないため、全身性の副作用が少ないのも利点です。
以上から、リボスチン点眼液の特徴として次のようなことが挙げられます。
【リボスチン点眼液の特徴】
・眼に生じたアレルギー反応(充血やかゆみなど)を抑える作用を持つ
・ヒスタミンをはじめ、好酸球やPAF(血小板活性化因子)のはたらきを抑える作用も持つ
・局所(目)にしかほとんど作用しないため、副作用が少ない
2.リボスチンはどのような疾患に用いるのか
リボスチンはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には次のように記載されています。
【効能又は効果】
アレルギー性結膜炎
アレルギー性結膜炎とは、眼の結膜(いわゆる「白目」の部分)にアレルギー反応が生じてしまう状態です。アレルギー反応は炎症反応を引き起こすため、結膜にアレルギーが生じると結膜炎になります。
代表的なケースとしては、花粉症で生じるアレルギー性結膜炎が挙げられます。
花粉症では「花粉」というアレルギー物質(アレルゲン)が結膜に付着する事で、結膜にアレルギー反応が引き起こされます。
これを抑えてくれるのがリボスチン点眼液になります。
リボスチンはアレルギー性結膜炎に対して、どのくらい有効なのでしょうか。
リボスチン点眼液をアレルギー性結膜炎の患者さんに点眼した試験では、中等度以上に症状が改善したと判定された方の率は69.1%と報告されています。
また、自覚症状が中等度以上改善した率は各症状に対して、
- そう痒感(かゆみ)に対する改善率は71.6%
- 充血に対する改善率は71.6%
- 流涙(なみだ)に対する改善率は76.7%
- 異物感に対する改善率は69.7%
- 眼痛に対する改善率は81.2%
- 羞明(まぶしさ)に対する改善率は76.3%
- 眼脂に対する改善率は64.6%
と報告されています。
また重症度別にみると、
- 軽症の方に対する改善率は66.7%
- 中等症の方に対する改善率は69.6%
- 重症の方に対する改善率は70.0%
と重症度に関わらず効果が得られる事が確認されています。
また病態別にみると、
- 通年性アレルギー性結膜炎に対する改善率は75.0%
- 季節性アレルギー性結膜炎に対する改善率は71.3%
と病態に関わらずしっかりと効果が得られる事も確認されています。
3.リボスチンにはどのような作用があるのか
リボスチン点眼液はどのような作用機序によって、アレルギー症状を抑えてくれるのでしょうか。
リボスチンの作用について詳しく紹介させて頂きます。
Ⅰ.抗ヒスタミン作用
リボスチンは抗ヒスタミン薬というお薬に属し、その主な作用は「抗ヒスタミン作用」になります。これはヒスタミンという物質のはたらきをブロックするという作用です。
アレルギー症状を引き起こす代表的な物質に「ヒスタミン」があります。
アレルゲン(アレルギーを起こすような物質)に暴露されると、アレルギー反応性細胞(肥満細胞など)からアレルギー誘発物質(ヒスタミンなど)が分泌されます。これが受容体などに結合することで様々なアレルギー症状が発症します。
ちなみに肥満細胞からはヒスタミン以外にもアレルギー誘発物質が分泌されますが、これらはまとめて「ケミカルメディエータ―」と呼ばれています。
リボスチンのような抗ヒスタミン薬は、アレルギー反応性細胞からヒスタミンが分泌されるのを抑える作用があります。またヒスタミンが結合する部位であるヒスタミン受容体をブロックする作用もあります。
これらの作用によりアレルギー症状を和らげてくれます。
Ⅱ.血小板活性化因子拮抗作用
血小板活性化因子(PAF)は、血小板を活性化させることで凝集させたり、血管を拡張させたりするための物質ですが、気管支喘息などのアレルギーを誘発する物質の1つでもあることが明らかになっています。
リボスチンはPAFのはたらきもブロックすることが確認されており、これによってもアレルギー症状を緩和させると考えられています。
Ⅲ.抗好酸球作用
アレルギー反応の1つに、アレルゲン(アレルギーの原因になる物質)によって好酸球の脱顆粒(好酸球が顆粒を分泌する)という現象があります。
好酸球から分泌される顆粒には様々な成分が含まれており、上記のようなゲミカルメディエーターもその1つです。また、炎症の原因となる物質も放出してしまい、これによってアレルギー反応がより悪化してしまう事もあります。
アレルゲン(アレルギーを引き起こす原因となる物質)の刺激によって好酸球が結膜に浸潤し、アレルギー反応を引き起こしてしまうことがありますが、リボスチンは好酸球が結膜周辺に浸潤してくるのを抑えるはたらきがあります。
好酸球の脱顆粒の程度を見る検査として「ECP」がありますが、リボスチンは涙液中のECPの量を有意に減少させる事が確認されています。
4.リボスチンの副作用
リボスチンにはどんな副作用があるのでしょうか。また副作用の頻度はどのくらいなのでしょうか。
リボスチンの副作用発生率は3.8%と報告されています。眼という局所にしかほぼ作用しないお薬ですので、副作用は多くはありません。
生じうる副作用としては、
- 眼の刺激
- 頭痛
が報告されていますが程度も軽いものがほとんどで、多くは様子を見るか点眼を中止すれば自然と改善していきます。
ただしあまりに症状が強いものや自然と改善しないような場合は、処方してもらった主治医に相談し、指示を仰ぐようにしましょう。
5.リボスチンの用法・用量と剤形
リボスチンは、
リボスチン点眼液0.025% 5ml
の1剤形のみがあります。
リボスチンの使い方としては、
1回1~2滴を1日4回(朝、昼、夕方及び就寝前)点眼する。
となっています。
実際は厳密に1日4回を点眼する必要はなく、ある程度柔軟に考えて頂いて問題ありません。
6.リボスチンはコンタクトレンズの上から点眼できるのか
点眼液を処方すると、患者さんから良く聞かれる質問があります。
それは「コンタクトを付けたまま点眼して大丈夫ですか?」というものです。
この回答は、
- ハードコンタクトレンズなら可能
- ソフトコンタクトレンズは要注意
というのが答えになります。
点眼薬の多くは、防腐剤としてベンザルコニウム塩化物が含まれており、これはソフトコンタクトレンズに吸着してしまい、コンタクトレンズを変形させる恐れがある事が指摘されています。
そのため防腐剤が入っている点眼液は、ソフトコンタクトレンズ装着時には点眼しない方が良いのです。
そしてリボスチン点眼液にもベンザルコニウム塩化物が含まれています。そのためソフトコンタクトレンズ装着時の点眼は推奨されません(ハードコンタクトレンズ装着下は点眼可能です)。
しかし実際の臨床では、1Dayなどの期間の短い使い捨てコンタクトレンズであればソフトタイプであっても、「コンタクトレンズの上から点眼しても良い」とする先生も多いようです。
これは、リボスチン点眼液中に含まれるベンザルコニウム塩化物が1dayコンタクトレンズに吸着してしまう可能性はあるのだけれども、1日で使い捨てるタイプのコンタクトレンズであれば、吸着によるトラブルが生じる前にコンタクトレンズを破棄することになるため、ほとんど問題とならないからです。
反対に2weekタイプであったり、長く使用するタイプのソフトコンタクトレンズを使用している場合は、リボスチンをコンタクトレンズ装着下では使用しない方が良いでしょう。
ただ、他の抗アレルギー点眼薬では、点眼してから10~15分程度待ってソフトコンタクトレンズを装着すればベンザルコニウム塩化物はほとんど吸着されないという報告もありますので、どうしてもソフトコンタクトレンズをつけたいという場合は、このように点眼後に少し待ってからコンタクトを装着するようにしてもよいかもしれません。
7.リボスチンが向いている人は?
以上から考えて、リボスチンが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。
リボスチンの特徴をおさらいすると、
・眼に生じたアレルギー反応(充血やかゆみなど)を抑える作用を持つ
・ヒスタミンをはじめ、好酸球やPAF(血小板活性化因子)のはたらきを抑える作用も持つ
・局所(目)にしかほとんど作用しないため、副作用が少ない
といったものがありました。
リボスチンは、他の抗アレルギー点眼液と比べて大きな特徴があるお薬ではありません。他のアレルギー点眼薬と同じようなものの1つという認識でよいでしょう。
点眼液は眼のみに作用し、体内にほとんど吸収されないため、眼だけにアレルギー症状が生じている際には良い適応となります。
反対にアレルギー症状が目だけではなく、鼻水も出たりと症状が多岐に渡る場合は、飲み薬を服用するなどして、全身にお薬が効くようにした方が良いでしょう。