ブロナック点眼液(一般名:ブロムフェナク)は2000年から発売されている点眼液です。
ブロナックは「NSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛薬)」という種類に属するお薬で、その成分はいわゆる「痛み止め」と同じです。
NSAIDsの代表薬としては「ロキソニン(ロキソプロフェン)」などがありますが、ブロナックも基本的な作用はこれと同じで、痛みを和らげたり炎症を抑えたりするはたらきを持ちます。
ブロナック点眼液はどのような特徴のあるお薬で、どのような患者さんに使うお薬なのでしょうか。
ブロナック点眼液の効果や副作用・特徴などを紹介していきたいと思います。
1.ブロナック点眼液の特徴
まずはブロナック点眼液の特徴を紹介します。
ブロナック点眼液は、眼の表面の炎症や痛みを和らげるお薬になります。
風邪を引いたり、外傷で痛みが生じた時にNSAIDs(ロキソニン、ボルタレン、セレコックスなど)と呼ばれるお薬を処方されることがありますが、ブロナックもNSAIDsであり基本的な作用機序はこれらと同じになります。
ただし飲み薬と違い、作用は局所的(眼のみ)の消炎・鎮痛に留まり、お薬が全身に回りにくいため副作用も飲み薬よりも少なめです。
注意点としては、あくまでも炎症や痛みに対して、それを緩和する作用を持っているに過ぎず、炎症や痛みの根本を治しているわけではありません。
これはNSAIDs全般に言えることですが、例えば風邪で高熱が出た時にNSAIDsを使えば熱は下がりますが、これは熱を下げているだけでウイルスをやっつけているわけではありません。骨折した痛みにNSAIDsを使えば痛みは軽減しますが、これも骨折自体は全く治していません。
症状を取っているだけですので、NSAIDsは漫然と使い続けることは危険です。例えば痛みに対して「原因はよく分からないけど、取り敢えずNSAIDsで痛みを抑えておこう」と安易に考えて投与してしまえば、痛みの原因を放置することになります。
痛みの原因がガンなどの重篤なものであれば発見が遅れてしまい取り返しのつかないことになることもあります。
NSAIDsは、原因がわかっている炎症や痛みに対して、あくまでも一時的にのみ使うべきものという認識を忘れないようにしましょう。
NSAIDs以外の炎症止めの点眼薬というとステロイドがあります。ステロイドも有用なお薬ですが、ブロナックはステロイドではないため、ステロイドが使いずらいような炎症や痛みにも用いることができます。
例えば感染で眼の痛みが生じている場合、ステロイドは免疫力を下げてしまうため不向きですが、ブロナックであれば使用が可能になります。
以上からブロナック点眼液の特徴として次のような点が挙げられます。
【ブロナック点眼液の特徴】
・炎症や痛みを和らげる作用を持つ
・あくまでの一時しのぎで原因に効くお薬ではない
・感染性の痛みにも使いやすい
・副作用は少ないが、角膜潰瘍に注意
2.ブロナック点眼液はどんな疾患に用いるのか
ブロナック点眼液はどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には、次のように記載されています。
【効能又は効果】
外眼部及び前眼部の炎症性疾患の対症療法
(眼瞼炎、結膜炎、強膜炎(上強膜炎を含む)、術後炎症)
ブロナックは各種炎症疾患に対して、炎症を和らげる作用を持ちます。
ただ上記に書かれている通り、あくまでも「対症療法」に過ぎません。
対症療法とは、症状に対して、それを抑えるために作用しているだけであって、症状を引き起こしている原因そのものを治しているわけではないという意味です。
3.ブロナック点眼液にはどのような作用があるのか
ブロナック点眼液はどのような機序で炎症や痛みを抑えているのでしょうか。
ブロナックの作用を説明する前に、まずは「炎症」とは何なのかについてお話します。
炎症とは、
- 発赤 (赤くなる)
- 熱感 (熱くなる)
- 腫脹(腫れる)
- 疼痛(痛みを感じる)
の4つの徴候を生じる状態のことで、感染したり受傷したりすることで生じます。またアレルギーで生じることもあります。
みなさんも身体をぶつけたり、ばい菌に感染したりして、身体がこのような状態になったことがあると思います。これは炎症が起きている状態なのです。
ブロナックをはじめとしたNSAIDsは、炎症の原因が何であれ、炎症そのものを抑える作用を持ちます。つまり、発赤・熱感・腫脹・疼痛を和らげてくれるという事です。
具体的にどのように作用するのかというと、ブロナックなどのNSAIDsはシクロオキシゲナーゼ(COX)という物質のはたらきをブロックするはたらきがあります。
COXは、プロスタグランジン(PG)が作られる時に必要な物質であるため、COXがブロックされるとプロスタグランジンが作られにくくなります。
プロスタグランジンは炎症や痛み、発熱を誘発する物質です。そのため、ブロナックがCOXをブロックすると炎症や痛み、発熱が生じにくくなるのです。
実際、ブロナックを点眼すると虹彩・毛様体といった部位のプロスタグランジンの合成低下が生じることがラットにおいて確認されています。
4.ブロナック点眼液の副作用
ブロナック点眼液にはどんな副作用があるのでしょうか。
ブロナックのような点眼液は、局所(眼)に直接点眼するため局所作用が主であり、お薬が全身に回りにくいというメリットがあります。
そのため副作用の頻度は多くはありません。
生じる可能性のある副作用としては、
- 眼の刺激感
- 眼の痛み
- 眼のかゆみ
- 結膜炎、眼瞼炎、角膜炎
- 眼の熱感
などがあります。また注意しなくてはいけない副作用として、
- 角膜びらん
- 角膜潰瘍
- 角膜穿孔
などといった角膜を傷つける副作用が、稀ながらも報告されています。
そのため、ブロナック点眼液の使用は症状が落ち着くまでの一時的にとどめ、漫然と長期間使用しないことが大切です。
5.ブロナック点眼液の用法・用量と剤形
ブロナック点眼液は次の剤型が発売されています。
ブロナック点眼液(ブロムフェナク)0.1% 5ml
また、ブロナック点眼液の使い方は、
通常、1回1~2滴、1日2回点眼する。
となっています。
6.ブロナック点眼液が向いている人は?
以上から考えて、ブロナック点眼液が向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。
ブロナック点眼液の特徴をおさらいすると、
・炎症や痛みを和らげる作用を持つ
・あくまでの一時しのぎで原因に効くお薬ではない
・感染性の痛みにも使いやすい
・副作用は少ないが、角膜潰瘍に注意
などがありました。
ブロナックには、炎症や痛みを和らげる作用がありますが、原因そのものを治すわけではなく、あくまでも症状を取っているだけという特徴があります。
そのため、原因を治すような治療を行っていて、それでも炎症や痛みが強い場合に補助的に用いるといった使い方が理想的です。
痛みの原因が何なのかも分からないのに「とりあえずブロナックで痛みを取っておこう」などといった使い方は危険ですので推奨されません。
原因は治せていないのに、炎症や痛みは抑えることができてしまうため、重篤な原因疾患が隠れていた場合、発見が遅れてしまう危険があります。
実際、ブロナックの【重要な基本的注意】という欄には次のように書かれています。
・本剤による治療は原因療法ではなく対症療法であることに留意すること。
・眼の感染症を不顕在化させる恐れがあるので、感染による炎症に対して用いる場合には観察を十分に行い、慎重に投与すること。
ブロナックのようなNSAIDsは基本的には、原因を治す治療を行った上で補助的なものとして、一時的に使用するお薬になります。