ジクアス点眼液(一般名:ジクアホソルナトリウム)は2010年から発売されている点眼液になります。
「ドライアイ治療薬」という種類に属し、目に潤いを与えてくれるお薬になります。ドライアイの治療というと、人口涙液やヒアルロン酸の点眼が今までの主流でしたが、ジクアスはムチンという目の保湿作用のある粘液の分泌を促進することで目の乾燥を改善する、新しい作用機序を持ったお薬になります。
ジクアス点眼液はどのような特徴のあるお薬で、どのような患者さんは使うお薬なのでしょうか。
ジクアス点眼液の効果や副作用・特徴などを紹介していきたいと思います。
1.ジクアス点眼液の特徴
まずはジクアス点眼液の特徴を紹介します。
ジクアス点眼液は、ムチンという粘液の分泌を増やすことで、眼を保湿させる作用を持つ点眼薬になります。
主にドライアイの方に用いられ、眼の乾燥を改善するはたらきがあります。
ドライアイというと、人口涙液である「ソフトサンティア」、ヒアルロン酸を配合している「ヒアレイン」などで治療を行うことが一般的でしたが、2010年に新しい作用機序を持つドライアイ治療薬「ジクアス」が発売され、ドライアイ治療の選択肢が広がりました。
ジクアスは従来のドライアイ治療薬と比べると、眼を潤す力は強い印象があります。反面で、涙が多くなってしまったり、眼がしみたりという副作用も従来の点眼薬よりも多めです。
以上からジクアス点眼液の特徴として次のような点が挙げられます。
【ジクアス点眼液の特徴】
・ムチンを増やす事で眼を保湿し、ドライアイ改善に効果を認める
・他のドライアイ治療薬と比べて効果は強め
・他のドライアイ治療薬と比べて副作用もやや多め
2.ジクアス点眼液はどんな疾患に用いるのか
ジクアス点眼液はどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には、次のように記載されています。
【効能又は効果】
ドライアイ
非常に分かりやすいですね。
実際の臨床でも、ドライアイの方の目の保湿のために用います。
ジクアス点眼液はドライアイの方の目に点眼することで、ムチン分泌を促進し、眼の保湿作用を改善するはたらきがあります。
3.ジクアス点眼液にはどのような作用があるのか
ジクアス点眼液はどのような機序でドライアイを改善させているのでしょうか。
ジクアスの主成分である「ジクアホソルナトリウム」は、P2Y2受容体作動薬と呼ばれています。これはP2Y2受容体のはたらきを強める作用を持つという事です。
眼の表面組織に存在するP2Y2受容体は、結膜からムチンという粘液と水分を分泌するはたらきがあることが知られています。
つまりジクアスはP2Y2受容体のはたらきを強めることで、眼のムチンと水分を増やしてくれるのです。
それぞれを詳しくみてみましょう。
Ⅰ.涙液分泌促進作用
ジクアスは、P2Y2受容体を刺激することで、結膜からの水分(涙液)の分泌を増やし、それによって眼に潤いを与えてくれます。
Ⅱ.ムチン分泌促進作用
ジクアスは、P2Y2受容体を刺激することで、結膜からのムチンという物質の分泌を増やします。
ムチンは粘液性の多糖類であり、保水性が非常に高いことが知られています。
ムチンが分泌されることによって、同じく結膜から分泌された涙液(水分)を逃がさず眼にとどめるため、眼の保湿効果が長く続くようになります。
4.ジクアス点眼液の副作用
ジクアス点眼液にはどんな副作用があるのでしょうか。
ドライアイ治療に用いられる点眼液は、基本的に安全性が高いものがほとんどです。実際、従来のドライアイ治療薬である
- ソフトサンティア(人口涙液)
- ヒアレイン(ヒアルロン酸)
などは、ほとんど副作用のない点眼薬です。
ジクアス点眼液も安全性は高いお薬なのですが、これら従来のドライアイ点眼液と比べると副作用はやや多めになります。
しかし重篤な副作用はほとんどなく、多くはジクアスの点眼を中止すれば改善するような副作用になります。
具体的には、
- 眼の刺激感(しみる)
- 眼脂(めやに)
- 結膜充血
- 眼痛
- 眼の掻痒感
- 眼の異物感
などが報告されています。
5.ジクアス点眼液の用法・用量と剤形
ジクアス点眼液は次の剤型が発売されています。
ジクアス点眼液(ジクアホソルナトリウム)3% 5ml
また、ジクアス点眼液の使い方は、
通常、1回1滴、1日6回点眼する。
となっています。
ジクアスは作用時間がそれほど長くないため、1日6回という頻回の点眼が必要になります。
実際はきっちり4時間置きに点眼するというのは難しいでしょうから、ある程度幅を持たせた点眼法で良いと思われますが、詳しくは主治医に確認してください。
6.ジクアス点眼液はコンタクトレンズの上から点眼していいのか?
点眼液を処方すると、患者さんから良く聞かれる質問があります。
それは「コンタクトを付けたまま点眼して大丈夫ですか?」というものです。
この回答は、コンタクトレンズの種類によります。
ジクアス点眼液に含まれているベンザルコニウム塩化物という成分はコンタクトレンズに吸着してしまうことが知られており、ここからソフトコンタクトレンズ装着時はジクアス点眼は避けた方が良いと添付文書には記載されています。
つまり、ハードコンタクトレンズであれば可能であるけども、ソフトコンタクトレンズは要注意ということになります。
実際の臨床の感覚としては、1Dayなどの使い捨てコンタクトレンズであればソフトタイプであっても、「コンタクトレンズの上からジクアスを点眼しても良い」とする先生も多いようです。
これは、ジクアスが1dayコンタクトレンズに吸着してしまう可能性はあるのだけれども、1日で使い捨てるタイプのコンタクトレンズであれば、吸着によるトラブルが生じる前にコンタクトレンズを破棄することになるため、ほとんど問題とならないからです。
反対に2weekタイプであったり、長く使用するタイプのソフトコンタクトレンズを使用している場合は、ジクアスはコンタクトレンズ装着下では使用しない方が良いでしょう。
6.ジクアス点眼液が向いている人は?
以上から考えて、ジクアス点眼液が向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。
ジクアス点眼液の特徴をおさらいすると、
・ムチンを増やす事で眼を保湿し、ドライアイ改善に効果を認める
・他のドライアイ治療薬と比べて効果は強め
・他のドライアイ治療薬と比べて副作用もやや多め
などがありました。
ドライアイ治療薬の中でジクアスは、効果はしっかりしているけども副作用もやや多め(ただし重篤な副作用はほとんどない)という事が言えます。
そのためドライアイで、しっかりと症状を抑えたいという方にはジクアスは向いているお薬となります。
ソフトサンティアやヒアレインといった他のドライアイ治療薬で効果が不十分であった方も、しっかりと眼を保湿してくれるジクアスは試してみる価値はあります。
反対にジクアスで目の刺激感や眼脂が出てしまう方は、ソフトサンティアやヒアレインといったよりマイルドなドライアイ治療薬に変更しても良いかもしれません。