フシジンレオ軟膏(フシジン酸ナトリウム)の効果と副作用

抗生剤軟膏

フシジンレオ軟膏(一般名:フシジン酸ナトリウム)は病院で処方される塗り薬で、抗菌薬の一種になります。1972年から発売されているお薬です。

塗り薬であるフシジンレオ軟膏は、主に皮膚のばい菌をやっつけるために用いられます。

抗菌薬にも色々な種類があり、患者さんの状態や感染した菌の種類によって適したものは異なってきます。

フシジンレオ軟膏はどのような作用を持っていて、どのような効果が期待できるお薬なのでしょうか。

フシジンレオ軟膏の効果・効能や特徴、副作用についてみてみましょう。

 

1.フシジンレオ軟膏の特徴

まずはフシジンレオ軟膏の特徴をざっくりと紹介します。

フシジンレオ軟膏は、主に黄色ブドウ球菌に対して強い抗菌力を持つお薬です。

フシジンレオ軟膏の主成分であるフシジン酸ナトリウムには、ばい菌(細菌)をやっつける作用があります。そのため皮膚の細菌感染に対して用いられます。

ばい菌は、グラム染色という染色で染まる「グラム陽性菌」と、染まらない「グラム陰性菌」に分けられます。更にグラム陽性菌はグラム陽性球菌とグラム陽性桿菌、グラム陰性菌はグラム陰性球菌とグラム陰性桿菌に分けられます。

フシジンレオ軟膏は特にグラム陽性球菌に良く効き、グラム陰性桿菌にはほとんど効かないという特徴があります。ちなみにグラム陽性桿菌とグラム陰性球菌にもフシジンレオ軟膏は効きますが、これらは多く見かける菌ではないため、日常的な臨床ではグラム陽性球菌とグラム陰性桿菌への効果が重要になります。

更にフシジンレオ軟膏は、グラム陽性球菌の中でも黄色ブドウ球菌に強い効果を発揮します。黄色ブドウ球菌は、皮膚に元々いる菌(常在菌)になります。普段は悪さをしませんが、皮膚に傷ができたりすると、そこに侵入して炎症を起こすことがあります。

そのためフシジンレオ軟膏は、皮膚の黄色ブドウ球菌の感染に対してよく用いられる抗生剤となります。

ちなみにばい菌をやっつけるお薬には、殺菌作用(菌を殺す)を持つものと静菌作用(菌の増殖を抑える)を持つものがありますが、フシジンレオ軟膏は後者になります。

よくある勘違いとして、フシジンレオはステロイド骨格を持つお薬と説明されるため「ステロイドなのか?」と心配されることがありますが、あくまでも骨格がステロイドなだけで、ステロイドの作用は持っていません。

フシジンレオは黄色ブドウ球菌に比較的特化した抗菌薬だと言えます。これは効く菌が少ないという一見するとデメリットにも見えますが、余計な菌に作用せずピンポイントで効く抗菌薬というのは耐性菌(ある抗菌薬が効かなくなってしまう菌)を出現させにくいためメリットとなるのです。

また抗菌薬ではありますが飲み薬ではなく塗り薬であるため、全身にお薬が回ることが少なく、重篤な副作用がない点もフシジンレオ軟膏の良い特徴です。

デメリットとしては適応菌種が少ないため、使用前に「本当にフシジンレオが効く菌なのか」をしっかりと確認しなくてはいけないことが挙げられます。例えば大腸菌のようなグラム陰性桿菌の感染なのに、よく確認しないでフシジンレオ軟膏を使ってしまうと無意味なこととなります。

また副作用として「感作」の報告がある点も注意が必要です。感作については後述しますが、フシジンレオ軟膏に対して身体がアレルギー反応を起こしてしまうことです。

以上からフシジンレオ軟膏の特徴を挙げると、次のようなことが挙げられます。

【フシジンレオ軟膏の特徴】
・静菌作用(ばい菌の増殖を抑える作用)を持つ
・特に黄色ブドウ球菌に強い抗菌力を持つ
・グラム陰性桿菌(大腸菌など)には効かない
・耐性菌が生じにくい
・感作に注意

 

2.フシジンレオ軟膏はどのような疾患に用いるのか

フシジンレオ軟膏はどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には、次のように記載されています。

【効能又は効果】
<適応菌種>
本剤に感性のブドウ球菌属

<適応症>
・表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、慢性膿皮症、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染

ばい菌(主に黄色ブドウ球菌)が皮膚に悪さをしてしまっている時、そのばい菌をやっつけるために用いられるのがフシジンレオ軟膏です。

ばい菌になら何でも効くというわけではなく、効く菌種が限られているのに注意をしなくてはいけません。

 

3.フシジンレオ軟膏にはどのような効果・作用があるのか

フシジンレオ軟膏は皮膚にばい菌が感染している時、そのばい菌をやっつけるために使われますが、どのような機序で治療しているのでしょうか。

フシジンレオ軟膏は、基本的にグラム陽性球菌、グラム陽性桿菌、グラム陰性球菌に対して抗菌作用があります。グラム陰性桿菌にはほとんど効きません。

日常の臨床で問題となる菌のほとんどは、グラム陽性球菌かグラム陰性桿菌です。そのため、ざっくりと「グラム陽性球菌に効いて、グラム陰性桿菌には効かないお薬」と考えてよいでしょう。

臨床上もっとも用いられるのは皮膚感染の原因菌として多い、

  • ブドウ球菌(特に黄色ブドウ球菌)

で、これはグラム陽性球菌に属します。同じグラム陽性球菌である連鎖球菌や肺炎球菌にも効果はありますが、黄色ブドウ球菌と比べると弱めです。

また、他にも

・グラム陽性桿菌:コリネバクテリウム属(ジフテリア菌など)
クロストリジウム属(破傷風菌など)
・グラム陰性球菌:ナイセリア属

に対しても強い抗菌作用を示すことが確認されています。

またフシジンレオ軟膏の良い特徴として、交差耐性が生じにくいことが挙げられます。これは、ある種の抗菌薬に対してばい菌が耐性(抵抗性)を獲得してしまうと、別の種の抗菌薬も効きにくくなってしまうという現象です。

フシジンレオ軟膏はこれが生じにくいため、他の抗菌薬が効かなくなった菌にも効果を発揮しやすいのです。

臨床では、多くの抗菌薬に耐性を獲得してしまった黄色ブドウ球菌である「多剤耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)」が問題となることがしばしばありますが、フシジンレオ軟膏はMRSAにも効く可能性があるという事です。

フシジンレオ軟膏の作用機序としては、主成分であるフシジン酸ナトリウムが、タンパク質の合成阻害作用を持っており、これによりばい菌が増殖に必要なタンパク質を合成できなくなることで静菌作用を発揮します。

 

4.フシジンレオ軟膏の副作用

フシジンレオ軟膏は塗り薬であり、全身に投与するものではないのでその副作用は多くはありません。

副作用発生率は1.08%と報告されており、副作用の内容としては、

  • 発疹
  • 疼痛
  • 刺激感

などの局所の副作用です。

いずれも重篤となることは少なく、多くはフシジンレオ軟膏の使用を中止すれば自然と改善していきます。

注意すべき副作用としては感作があります。

感作とは「身体がその物質をアレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)だと身体が判断してしまう」ことです。

フシジンレオ軟膏に対して感作が生じると、フシジンレオ軟膏を塗布した時にアレルギー症状が生じるようになる可能性があります。

具体的な症状としては、

  • そう痒
  • 発赤
  • 腫脹
  • 丘疹
  • 小水疱

などがあり、フシジンレオ軟膏を塗る事でこれらの皮膚症状が生じた場合、感作が生じた可能性がありますので、フシジンレオ軟膏を中止して主治医に相談するようにして下さい。

 

5.フシジンレオ軟膏の用量・用法と剤型

フシジンレオ軟膏は、

フシジンレオ軟膏2%(フシジン酸ナトリウム) 10g
フシジンレオ軟膏2%(フシジン酸ナトリウム) 500g

と2つの剤型があります。10gはチューブに入っており、500gはボトルに入っています。

フシジンレオ軟膏の使い方は、

患部を清潔にした後 1 日数回適量を直接患部に塗布するか又は無菌ガーゼに延ばして貼付する。

と書かれています。

 

6.フシジンレオ軟膏が向いている人は?

以上から考えて、フシジンレオ軟膏が向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

フシジンレオ軟膏の特徴をおさらいすると、

・静菌作用(ばい菌の増殖を抑える作用)を持つ
・特に黄色ブドウ球菌に強い抗菌力を持つ
・グラム陰性桿菌(大腸菌など)には効かない
・耐性菌が生じにくい
・感作に注意

というものでした。

ここから、

  • ばい菌が感染している創で
  • ブドウ球菌による感染の可能性が高い創

には向いている塗り薬だと考えられます。

フシジンは比較的黄色ブドウ球菌に特化した抗菌薬だということができます。効く菌が少ないお薬ですが、これは一概に悪いことではありません。

このようなお薬を「抗菌スペクトラムが狭い」と言いますが、抗菌スペクトラムが狭いお薬は余計な菌には作用しないため、耐性菌が生じにくいというメリットがあるのです。

そのため、黄色ブドウ球菌の感染であることが間違いない皮膚感染に対しては、無駄に抗菌スペクトラムが広い抗菌薬を使うのではなく、フシジンレオ軟膏を使った方が、耐性菌を出現させずに安全に治せます。

しかし一方で感作の可能性があるため、そのような徴候が出現したら使用を中止すべきでしょう。

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