レメロンで生じる眠気を精神科医が解説。眠くなる機序と眠気の対処法

レメロン(一般名:ミルタザピン)は、眠りに対する作用が強い抗うつ剤です。

服用すると眠気が生じたり、眠りが深くなったりという作用を持つため「鎮静系抗うつ剤」に分類される事もあります。そのため不眠を合併しているうつ病の方には役立ちますが、一方で日中に強い眠気が生じてしまい、生活に支障をきたしてしまう事もあります。

このようにレメロンの眠気は、上手に利用すれば患者さんに役立つ作用となる事もありますが、患者さんに支障をきたす副作用となってしまう事もあるのです。レメロンを用いる際には、この眠気を出来るだけ患者さんに役立つ作用になるように使っていく事が大切です。

レメロンの眠気はどのような機序で生じているものなのでしょうか。どのように利用すると効果的で、副作用として生じてしまった場合はどのような対処法があるのでしょうか。このような事を正しく理解しておくと、より効果的にレメロンを使う事ができるようになります。

ここではレメロンで生じる眠気について詳しくお話させていただきます。

1.レメロンの眠気を生じさせる2つの作用

レメロン(一般名:ミルタザピン)は、NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ剤)に属する抗うつ剤になります。

その名の通りノルアドレナリンとセロトニンを増やす作用が主ですが、実はレメロンはそれ以外にも様々な作用を持ちます。

レメロンの代表的な作用としては、

  • セロトニンの分泌を増やす
  • ノルアドレナリンの分泌を増やす
  • ヒスタミンがヒスタミン1受容体にくっつかないようにする
  • セロトニンがセロトニン2受容体、セロトニン3受容体にくっつかないようにする
  • 前頭前野のドーパミンの分泌を増やす

などが挙げられます。

このうち眠気に関しては、

  • セロトニン
  • ヒスタミン

の2つの物質への作用が関わっています。1つずつ詳しく見ていきましょう。

Ⅰ.セロトニン

セロトニンはモノアミンと呼ばれる気分に関係する神経伝達物質(神経から神経に情報を伝達する物質)であり、落ち込みや不安を改善させる作用があります。

また、それ以外にも様々な作用があり、

  • 痛覚(痛みの感覚)を調整する
  • 覚醒レベルを調整する
  • 性機能を調整する
  • 胃腸の動きを調整する

など様々な役割があります。

神経から分泌されたセロトニンは「セロトニン受容体」という部位に結合しますが、セロトニン受容体もたくさんの種類があり、どのセロトニン受容体にセロトニンが結合するかによって発揮される作用が異なるのです。

例えば、セロトニンがセロトニン1A受容体に結合すると落ち込みや不安の改善が得られます。またセロトニンがセロトニン4受容体に結合すると胃腸の動きが活性化します。

抗うつ剤はセロトニンを増やす事でうつ症状を改善させますが、これは主にセロトニン1A受容体にセロトニンが結合するためです。またガスモチン(一般名:モサプリド)という胃薬がありますが、これはセロトニン4受容体を刺激する事で胃腸の動きを改善させます。

このうち、今回の眠気に関わってくるのはセロトニン2受容体です。

セロトニン2受容体には更に、

  • セロトニン2A受容体
  • セロトニン2B受容体
  • セロトニン2C受容体

などがありますが、このうちセロトニン2A受容体にセロトニンが結合すると、神経が興奮する事が知られています。

レメロンはこのセロトニン2A受容体にフタをしてしまい、セロトニンがセロトニン2A受容体に結合できないようにしてしまいます。すると中枢神経(脳)が興奮しにくくなるため鎮静がかかり、眠りの質が深くなるのです。

実際に様々な研究においてレメロンは深部睡眠(深い眠り)の割合を増やし、眠りの質を改善させる事が報告されています。

またセロトニン2A受容体阻害作用を持つ他の抗うつ剤には、

  • デジレル・レスリン(一般名:トラゾドン)
  • 四環系抗うつ剤

などがありますが、これらもレメロンと同じように眠りを深くする作用が報告されています。

反対に、

  • SSRI(選択的セロトニン再取込み阻害薬)
  • SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取込み阻害薬)
  • 三環系抗うつ剤

などはセロトニン2A受容体を刺激する作用を持ちます。そのためこれらの抗うつ剤は時に不眠や熟眠障害(眠りが浅くなる・夢を多くみるようになる)といった副作用が生じる事があるのです。

Ⅱ.ヒスタミン

ヒスタミンも神経伝達物質の1つで、

  • 食欲を抑える
  • アレルギー症状を引き起こす
  • 胃酸の分泌を促す

など、身体に様々な作用をもたらす物質です。

ヒスタミンはアレルギー症状を引き起こす物質でもあるため、アレルギー疾患(花粉症など)にはヒスタミンのはたらきを抑えるお薬(抗ヒスタミン薬)が用いられています。アレルギーは主にヒスタミンがヒスタミン1受容体に結合する事で生じるため、抗ヒスタミン薬はヒスタミン1受容体にフタをしてしまい、ヒスタイン1受容体にヒスタミンが結合できないようにします。

代表的な抗ヒスタミン薬には、

  • アレグラ(一般名:フェキソフェナジン)
  • アレジオン(一般名: エピナスチン)

などがあります。これらのお薬を花粉症などで服用している方もいらっしゃるかもしれませんね。

またヒスタミンが胃に存在するヒスタミン2受容体に結合すると、胃酸の分泌が促されます。胃炎や胃潰瘍などに用いられる胃薬に「H2ブロッカー」と呼ばれるお薬がありますが、これはヒスタミン2受容体にヒスタミンが結合できないようにしてしまうお薬です。これによって胃酸の分泌が抑えられ、胃壁が荒れにくくなるのです。

代表的なH2ブロッカーには、

  • ガスター(一般名:ファモチジン)

などがあります。こちらの名前もCMなどで聞いた事がある方もいらっしゃるでしょう。

このようにヒスタミンは私たちの身体の中で実に様々なはたらきをしているのです。

そして、これらの他にもヒスタミンは「脳を覚醒させる」というはたらきを持っています。具体的にはヒスタミンが中枢神経(脳)に存在するヒスタミン1受容体に結合すると、脳は覚醒しやすくなるのです。

レメロンは中枢神経に存在するヒスタミン1受容体にフタをしてしまい、ヒスタミンがヒスタミン1受容体に結合できないようにしてしまう作用を持ちます(抗ヒスタミン作用)。これによって覚醒レベルは落ちやすくなり、眠くなるというわけです。

ちなみに花粉症などに用いられる抗ヒスタミン薬は「眠くなりやすい」事が知られていますが、これはレメロンの抗ヒスタミン作用と同じ機序が原因です。ただしアレルギー疾患に使う抗ヒスタミン薬は中枢神経に移行しにくいものも多く、そのようなものはあまり眠気が生じません。

レメロンは強い抗ヒスタミン作用を持ち、また中枢神経への移行性も高いため、服用すると眠気が生じるのです。

しかし抗ヒスタミン作用は、すぐに耐性(慣れ)が出てしまう事が知られています。実際、レメロンは服用してから数日は強い眠気が生じますが、しばらく経つと眠気に慣れてくる事がよくあります。これはレメロンの服用を続けた事で抗ヒスタミン作用への耐性が生じたという事です。

そのため、この眠りを導く効果(入眠作用)については、長期間に渡って持続しない可能性もあります。一方でセロトニンによって生じる眠りを深くする作用は、耐性は生じません。

2.レメロンで生じる眠気をうつ病治療に上手に使うために

レメロンは抗うつ剤に属し、期待される主な役割はうつ症状(落ち込み、関心や興味の低下、意欲低下、集中力低下など)の改善になります。

しかしレメロンは眠りへの作用に優れる事から、不眠を合併している方にとっては1剤でうつ症状の改善だけでなく眠りも改善できる効率良い治療薬になります。

レメロンの眠気は、

  • セロトニン2A受容体をブロックする事で眠りを深くする(熟眠作用)
  • ヒスタミン1受容体をブロックする事で眠気を生じさせる(入眠作用)

の2つの機序からなる事を説明しました。

またセロトニンへの作用は耐性(慣れ)が生じませんが、ヒスタミンへの作用は耐性が生じやすい事もお話しました。

ここから、どのような方であればレメロンのこの眠気を上手に利用できるのかを考えてみましょう。

Ⅰ.レメロンの眠気を利用しやすい患者さんは

レメロンの睡眠への効果としては、次のような報告がされています。

  1. 睡眠潜時を短縮する(床についてから眠りに入るまでの時間が短くなる)
  2. 深睡眠を増やす(深い眠りの割合を増やしてくれる)
  3. 全睡眠時間の延長(睡眠時間が長くなる)

「睡眠潜時を短縮する」というのは、平たく言えば「寝付きを良くする」という事です。これはレメロンのもつ抗ヒスタミン作用が主に関係していると考えられます。この作用は持続する事もありますが、抗ヒスタミン作用は耐性が生じる事が知られているため、服用を続けていると次第に効果が減弱していく可能性がある点には注意が必要です。

「深睡眠を増やす」というのは「眠りの質を高める」という事です。これはレメロンの持つセロトニン2A受容体をブロックする作用が主に関係しています。

睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠があり、両者が交互に出現します。レム睡眠は身体は休んでいますが脳は活動しており、そのために夢を見やすい睡眠です。レム睡眠中は、恐らく脳が記憶の整理作業などをしているのだと考えられています。レム睡眠は記憶を定着させるために必要なものなのですが、脳が活動している分だけ眠りの質としては浅くなります。

ノンレム睡眠は脳も身体も休んでいる睡眠です。ノンレム睡眠は更に、ステージ1・2(浅睡眠)、ステージ3・4(深睡眠)があり、ステージが上がるほど眠りは深くなっていきます。

レメロンはステージ1・2の割合を減らし、ステージ3・4の割合を増やす事が確認されています。これは睡眠の質を改善させているという事です。

更にレメロンはレム睡眠を減らさない事が確認されています。レム睡眠は記憶の整理などに必要なものであるため、これまで減らしてしまうと記憶力や集中力の低下などをきたすリスクがあります。抗うつ剤や睡眠薬の中にはレム睡眠を抑制するものも多くありますが、そのような抗うつ剤は日中にボーッとしたりミスが多くなるという副作用が生じる事があります。一方でレメロンは眠りの質を深くしつつ、レム睡眠は減らさないため、このような副作用は理論上は生じにくくなります。

「全睡眠時間の延長」は「眠っている時間が長くなる」という事で、これはセロトニンとヒスタミンの両方による総合的な作用だと考えられます。

以上から考えるとレメロンは、寝付きの改善にも有効だし、中途覚醒(夜中に何度も目覚めてしまう)にも有効ですが、主に後者の作用に優れる事が分かります。そのため「眠りの質が悪化している」うつ病患者さんに特に適しています。

眠りの質が悪化しているというのは、

  • 夜中に何度も目覚める(中途覚醒)
  • 起きたい時間よりも早く目覚めてしまう(早朝覚醒)
  • 夢(時に悪夢)にうなされる事が多い
  • いくら寝ても疲れが取れていない

といった症状の方に当てはまるでしょう。

Ⅱ.レメロンの眠気が副作用になってしまう患者さんは

レメロンで生じる眠気は上手に利用すれば患者さんの不眠症状を改善させる事が出来ます。

しかし一方で眠気は生じて欲しくない時に生じてしまうと、副作用となります。つまり、「日中に眠気が生じてしまう」という場合はレメロンの眠気は副作用になってしまうという事です。

次のような方はレメロンの眠気が副作用になってしまいやすいため、服用する際は注意が必要です。

  • 日中に学業や仕事などで集中力を要する方
  • 睡眠時間が短い方

社会人の方や学生の方など、日中に眠気が出るとまずい方はレメロンの服用は気を付けないといけません。眠気によって学業・仕事に支障をきたすようになってしまうと、それが原因でかえって落ち込みや自責がひどくなってしまう事もあるためです。こうなってしまったら何のために抗うつ剤を使ったのか分かりませんよね。

また元々睡眠時間が十分に取れておらず、日中に眠気を感じている方がレメロンを服用してしまうと、その眠気が更に悪化してしまう可能性があります。

このような方々はレメロンを服用できないわけではありませんが、眠気によって状況が更に悪化する可能性もあるため、服用する際はそのメリット・デメリットをよく理解し、主治医とよく相談して決める必要があります。

3.レメロンの眠気はどのくらい強いの?

「レメロンは眠気が出やすい抗うつ剤です」
「服用する際は眠気に注意してください」

このように聞くとレメロンを服用するのが怖くなってしまうかもしれません。では一体、レメロンを服用するとどのくらい眠くなるのでしょうか。

これは個人差もありますので一概に答える事は出来ません。しかし全体的に見れば鎮静系抗うつ剤と呼ばれるだけあり、抗うつ剤の中でも眠気は強い方になります。

ここではレメロンの眠気のおおよそのイメージを知るため、他の代表的な抗うつ剤と比較してみましょう。

レメロンの眠気を【+++】とした時の、他の抗うつ剤で生じる一般的な眠気の程度を紹介します(お薬の効きには個人差もあるため、あくまでも目安に過ぎない事をご了承下さい)。

【抗うつ剤】 【眠気の強さ】
レメロン・レメロン(一般名:ミルタザピン) +++

Ⅰ.SSRIとの比較

SSRI(選択的セロトニン再取込み阻害薬)は、神経間に分泌されたセロトニンが神経に取り込まれてしまうのをブロックするお薬です。これによって神経間に長くセロトニンが留まるため、神経間のセロトニン濃度が上がり、うつ病を改善させます。

ではSSRIはどのくらい眠気が生じるのでしょうか。

【抗うつ剤】 【眠気の強さ】
ルボックス・デプロメール(一般名:フルボキサミン)
パキシル(一般名:パロキセチン)
ジェイゾロフト(一般名:セルトラリン) ±
レクサプロ(一般名:エスシタロプラム) ±

SSRIは多少の抗ヒスタミン作用を持つため、眠気が生じます。またα(アドレナリン)受容体もブロックし、これも眠気を引き起こす事があります。アドレナリンは興奮性の物質ですので、それがブロックされるという事は鎮静されやすい状態になるという事だからです。

しかしレメロンと比べると抗ヒスタミン作用は弱いため、全体的に見ればレメロンほどに眠気は生じません。

Ⅱ.SNRIとの比較

SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取込み阻害薬)は、神経間に分泌されたセロトニンとノルアドレナリンが神経に取り込まれてしまうのをブロックするお薬です。これによって神経間に長くセロトニン・ノルアドレナリンが留まるため、神経間のセロトニン・ノルアドレナリン濃度が上がり、うつ病を改善させます。

ではSNRIはどのくらい眠気が生じるのでしょうか。

【抗うつ剤】 【眠気の強さ】
トレドミン(一般名:ミルナシプラン)
サインバルタ(一般名:デュロキセチン) ±
イフェクサー(一般名:ベンラファキシン)

SNRIは多少の抗ヒスタミン作用を持つものもありますが、ノルアドレナリンという興奮性のアドレナリン系の物質を増やす作用に優れるため、脳を覚醒させやすく、眠気が生じにくい傾向にあります。

Ⅲ.三環系抗うつ剤との比較

三環系抗うつ剤は、1950年頃から使われるようになった古い抗うつ剤です。効果は強いものの、副作用も多いため現在ではあまり用いられていません。三環系抗うつ剤の基本的な作用機序も神経間に分泌されたセロトニンやノルアドレナリンが神経に取り込まれてしまうのをブロックする作用になります。

では三環系抗うつ剤はどのくらい眠気が生じるのでしょうか。

【抗うつ剤】 【眠気の強さ】
トフラニール(一般名:イミプラミン) +
アナフラニール(一般名:クロミプラミン) +
トリプタノール(一般名:アミトリプチリン) ++
アモキサン(一般名:アモキサピン) +

三環系抗うつ剤は古い抗うつ剤で作りが荒いため、余計な部位にも作用してしまいやすい抗うつ剤です。そのため抗ヒスタミン作用も比較的強く、眠気はSSRI・SNRIに比べると多めです。特にトリプタノールは抗ヒスタミン作用が強いため、眠気が生じやすい傾向にあります。

Ⅳ.鎮静系抗うつ剤との比較

  • 四環系抗うつ剤
  • デジレル・レスリン

と呼ばれる抗うつ剤は「鎮静系抗うつ剤」と呼ばれており、、レメロンと同じく眠りを導く作用に優れます。

元々レメロンは四環系抗うつ剤を基礎として開発されたという歴史もあり、四環系抗うつ剤とレメロンは似た作用を持ちます。またデジレル・レスリンという抗うつ剤はセロトニン2A受容体をブロックする作用に優れるため、眠りを深くする作用に優れます。

ではこれら鎮静系抗うつ剤ではどのくらい眠気が生じるのでしょうか。

【抗うつ剤】 【眠気の強さ】
テトラミド(一般名:ミアンセリン) ++
ルジオミール(一般名:マプロチリン) ++
デジレル・レスリン(一般名:トラゾドン) ++

鎮静系抗うつ剤は「鎮静系」と呼ばれるだけあり、どれも眠気は強めです。

四環系抗うつ剤はレメロンの前身のお薬ですので眠気は生じやすいのですが、レメロンよりも抗ヒスタミン作用は弱く、総合的な眠気はレメロンよりも穏やかになります。

デジレル・レスリンはセロトニン2A受容体をブロックする作用に優れる抗うつ剤ですが、一方で抗ヒスタミン作用はあまりありません。そのためこちらも総合的な眠気はレメロンよりも弱めになります。

4.レメロンで生じた眠気の対処法

レメロンを服用して、生活に支障が出るほどの眠気が生じてしまった場合、どのような対処法があるのでしょうか。

ここでは臨床でよく用いられる対処法を紹介させて頂きます。なお実際にこの対処法を実践される際は独断では行わず、必ず主治医の先生と相談しながら行うようにしてください。

Ⅰ.まずは睡眠環境の見直しを

まず忘れてはいけないのが、睡眠環境が適切かどうかの再確認です。

そもそも、元々の睡眠が不十分ではないでしょうか。

元々睡眠不足で何となく眠気を感じているところに、更にレメロンで服用してしまうと、強い眠気が生じやすくなります。

この場合はまず睡眠環境を適正化する事が大切です。しっかりとした睡眠が取れれば、レメロンの眠気が上乗せされても生活に支障を来たすほどにはならない可能性もあるためです。

質の高い睡眠を十分にとるためには、

  • 睡眠時間
  • 寝室の環境
  • 入眠前の過ごし方
  • 日中の疲労

などを意識するようにしましょう。

まずは睡眠時間です。必要な睡眠時間は個人差があり人によって異なりますが、おおよそ5~8時間程度になります。

中には4時間で大丈夫な人や10時間が必要な方もいらっしゃいますが、ほとんどは上記の時間に収まります。また必要な睡眠時間は年齢を重ねるとともに短くなっていくのが普通です。未成年であれば8時間は必要という方も多いのですが、高齢者となれば5時間で十分という方が多くなります。

このような事を基本として、自分にとって最適な睡眠時間を見つけていきましょう。

自分にとって必要な睡眠時間は、後述する寝室環境などが適正な条件下で「どのくらい眠れば十分に疲れが取れるか」で判断できます。例えば5時間睡眠だと次の日に眠気やだるさが残るのであれば5時間は少なすぎるという事です。

翌日に仕事などの予定がない日に、十分に疲れが取れて自然に目覚める時間はどのくらいなのかを計測してみましょう。この計測を数回行えば、自分に必要な睡眠時間は分かります。

また睡眠環境(寝室の環境)も大切です。極端な話、寝室が騒音でうるさければ眠りが浅くなってしまい疲れが取れないでしょう。寝室は静かで暗く、温度・湿度なども適正である事が望ましいでしょう。

あまり神経質になる必要はありませんが、おおむね、

  • 室温は25~29℃前後(布団の中の温度は33℃前後)
  • 光が入ってこない
  • 音が入ってこない(50db以下)
  • 夏は通気性のよい寝衣、冬は保温性の高い寝衣を
  • 湿度は50%前後

が睡眠には適していると言われています。

質のよい睡眠をとるためには、就寝前に徐々に心身を睡眠モードに切り替えていかないといけません。覚醒している状態からいきなり睡眠モードに入れるわけありませんので就寝の2~3時間前から眠るための準備をしていく事も大切です。

まず夜はLEDなどの白色光は避け、使うとしても白熱灯(オレンジっぽい光)を使いましょう。蛍光灯などの白色光はブルーライトの波長を含むため睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌を抑えてしまいます。一方で白熱灯はメラトニンの分泌を抑えません。パソコンやテレビ、スマホなどもブルーライトを発するため眠る前は極力使わない方が良いでしょう。

また入浴をしたり、ストレッチをしたりして心身をリラックスさせ、副交感神経を活性化させていく事も有効です。リラックスの神経である副交感神経が活性化するとスムーズに眠りに入りやすくなります。

質の良い睡眠をとるためには日中に適度に身体を動かす事も大切です。適度な疲労は心身を疲れさせ、眠りを深くしてくれます。日中に適度な運動習慣を取り入れると良いでしょう。

このように睡眠環境を改善するだけでも睡眠の質が改善し、日中の眠気を軽減させる事ができます。

Ⅱ、少し様子を見てみる

レメロンに限らずお薬の副作用は、服用を続けていくと慣れてくる事があります。特に抗ヒスタミン作用によって生じている眠気は耐性(慣れ)が生じやすいという特徴があります。

個人差はありますが、早いと2~3日で耐性が生じることもあります。つまりレメロンによって生じた眠気は、数日間様子をみてみると、自然と軽減していく可能性もあるという事です。

生じた眠気が何とか数日様子をみれそうな程度であった場合、少し様子をみてみるのも有効な方法の1つだという事です。

Ⅲ.少量から初めて少しずつ増やす

お薬というのは身体に何らかの変化を引き起こす物質です。それが好ましい変化であれば「作用」「効果」と呼ばれますし、好ましくない変化であれば「副作用」と呼ばれます。

一方で私たちの身体はホメオスタシス(恒常性:体内環境を一定に保とうとするはたらき)があり、急激な変化を好みません。変化の度合いが急激であればあるほど、身体はその変化に対応できずに様々な不調が生じてしまいます。

そうならないためには、身体の変化を出来るだけ少しずつにすることです。

具体的には、

  • 出来るだけ少ない量からはじめる
  • 出来るだけ期間を開けて増薬していく

といった事を行えば、眠気をはじめとした副作用は生じにくくなります。

もちろんこのようにゆっくり少しずつ増やすという事は、レメロンの作用(うつを改善させる効果)が出てくるのも遅くしてしまうという欠点もあります。そのため、どちらを優先するのかは作用・副作用の程度によって主治医とよく相談する必要があります。

レメロンは、『1錠(15mg)から開始し、1週間以上の間隔を開けて15mgずつ増量していく』というのが添付文書に沿った増量法になりますが、実際はこの用法だと眠気が出てしまって服用が続けられない方も少なくありません。

そのような場合は、

  • 0.5錠(7.5mg)や0.25錠(3.75mg)から開始する
  • 2週間や4週間間隔で増薬していく

と、よりゆっくりと身体を変化させていけば、身体が変化に対応しやすくなり、副作用も生じにくくなります。臨床的な実感としては、レメロンは0.5錠くらいから開始する方がうまくいく事が多いと感じます。

Ⅳ.どうしても眠気で困るようなら減薬・変薬を

上記の方法を試しても、どうしてもレメロンの眠気の改善が難しいようであれば、レメロンの量を減らしたり、他の抗うつ剤に変更したりといった方法を検討せざるをえません。

すでにある程度の量のレメロンを服用していて、その効果もある程度感じている場合には、お薬を変えるのではなく減薬を検討しましょう。レメロンを減薬すれば作用(うつを改善させる効果など)も弱まりますが、副作用(眠気など)も軽減します。その両者のバランスが取れている用量を主治医と一緒に探していきましょう。

また初期用量や低用量で眠気が生じてしまう場合は、レメロンの作用もほとんど得られていないのにず、副作用だけが出ている状態になりますので、これはレメロンを継続するメリットは乏しくなります。

この場合は別の抗うつ剤に変更することも検討しましょう。

抗うつ剤にはどれも一長一短ありますので、一概に「この抗うつ剤が良い」といえるものはありません。そのため投与する抗うつ剤は患者さんの症状や状態に応じて主治医とよく相談していく必要があります。

ちなみによく用いられる代表的な抗うつ剤で眠気が少ないものというと、

【SNRI】
・サインバルタ(一般名:デュロキセチン)
・イフェクサー(一般名:ベンラファキシン)

【SSRI】
・ジェイゾロフト(一般名:セルトラリン)
・レクサプロ(一般名:エスシタロプラム)

などが挙げられます。

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