ザジテン点眼液(一般名:ケトチフェンフマル酸塩)は1991年から発売されている点眼液(目薬)です。
アレルギーを抑えるはたらきを持つ「抗アレルギー薬」であり、主に花粉症で生じるような目の充血やかゆみなどに用いられています。
抗アレルギー点眼薬にもいくつかのお薬がありますが、その中でザジテンはどのような特徴のあるお薬で、どのような作用を持っているお薬なのでしょうか。
ザジテン点眼液の特徴や効果・副作用について詳しく説明していきます。
1.ザジテンの特徴
まずはザジテン点眼液の全体的な特徴について紹介します。
ザジテンはヒスタミンのはたらきをブロックすることでアレルギー症状を抑える目薬です。
ヒスタミンはアレルギーを引き起こす原因となる物質(ケミカルメディエーター)の1つです。そのため、このヒスタミンのはたらきをブロックする事ができればアレルギー症状を抑える事が出来ます。
これを狙っているのがザジテンをはじめとした「抗ヒスタミン薬」です。
ザジテンは点眼液のみならず、飲み薬や点鼻薬などもありますが、これらはすべて「ケトチフェンフマル酸塩」が主成分となっています。飲み薬は服用する事で全身の症状に効きますが、一方で全身にお薬が回るため眠気などの副作用がしばしば認められます。
対して点眼液(目薬)や点鼻薬は目や鼻といった局所のみに効かせる事が出来るため、その部位にしか効果がありませんが、全身に回らないため副作用が少ないという利点があります。
ザジテンは主に「抗ヒスタミン作用」によってアレルギー症状を抑えますが、それ以外のケミカルメディエーター(ロイコトリエンや血小板活性化因子など)も抑えるはたらきや、好酸球のはたらきを抑える作用もあり、これによりアレルギー症状を抑えてくれます。
以上から、ザジテン点眼液の特徴として次のようなことが挙げられます。
【ザジテン点眼液の特徴】
・眼に生じたアレルギー反応(充血やかゆみなど)を抑える作用を持つ
・ヒスタミンをはじめ、その他のケミカルメディエーター・好酸球のはたらきを抑える
・局所(目)にしかほとんど作用しないため、副作用が少ない
2.ザジテンはどのような疾患に用いるのか
ザジテンはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には次のように記載されています。
【効能又は効果】
アレルギー性結膜炎
アレルギー性結膜炎とは、眼の結膜(いわゆる「白目」の部分)にアレルギー反応が生じてしまう状態です。アレルギー反応は炎症反応を引き起こすため、結膜にアレルギーが生じると結膜炎になります。
代表的なケースとしては、花粉症で生じるアレルギー性結膜炎が挙げられます。
花粉症では「花粉」というアレルギー物質(アレルゲン)が結膜に付着する事で、結膜にアレルギー反応が引き起こされます。
ザジテンはアレルギー性結膜炎に対して、どのくらい有効なのでしょうか。
ザジテンのアレルギー性結膜炎に対する有効率は74.7%と報告されています。
内訳として、
- 季節性アレルギー性結膜炎に対する有効率は82.6%
- 通年性アレルギー性結膜炎に対する有効率は72.6%
と通年性の方が有効率が低い傾向があったことが報告されています。
また、眼の症状別に有効率を見てみると、
- 掻痒感(かゆみ)に対する有効率は71.9%
- 眼脂に対する有効率は68.7%
- 流涙に対する有効率は65.1%
- 羞明に対する有効率は66.1%
- 異物感に対する有効率は62.3%
- 結膜充血に対する有効率は61.8%
と報告されています。
3.ザジテンにはどのような作用があるのか
ザジテン点眼液はどのような作用機序によって、アレルギー症状を抑えてくれるのでしょうか。
ザジテンの作用について詳しく紹介させて頂きます。
Ⅰ.抗ヒスタミン作用
ザジテンは抗ヒスタミン薬というお薬に属し、その主な作用は「抗ヒスタミン作用」になります。これはヒスタミンという物質のはたらきをブロックするという作用です。
アレルギー症状を引き起こす物質の1つに「ヒスタミン」があります。
アレルゲン(アレルギーを起こすような物質)に暴露されると、アレルギー反応性細胞(肥満細胞など)からアレルギー誘発物質(ヒスタミンなど)が分泌されます。これが受容体などに結合することで様々なアレルギー症状が発症します。
ちなみに肥満細胞からはヒスタミン以外にもアレルギー誘発物質が分泌されますが、これらはまとめて「ケミカルメディエータ―」と呼ばれています。
ザジテンのような抗ヒスタミン薬は、アレルギー反応性細胞からヒスタミンが分泌されるのを抑える作用があります。またヒスタミンが結合する部位であるヒスタミン受容体をブロックする作用もあります。
これらの作用によりアレルギー症状を和らげてくれます。
Ⅱ.抗ロイコトリエン作用
ヒスタミン以外のケミカルメディエーターとして、ロイコトリエン(LT)があります。
ロイコトリエンも肥満細胞から分泌され、身体にアレルギー反応を起こしたり、気管を収縮させたりします。
ザジテンは、ヒスタミンと同じようにこのロイコトリエンの分泌を抑えるはたらきがあります。また、すでに分泌されてしまったロイコトリエンのはたらきをブロックする作用も持ちます。
これによってアレルギー症状を緩和させてくれます。
Ⅲ.血小板活性化因子拮抗作用
血小板活性化因子(PAF)は、血小板を活性化させることで凝集させたり、血管を拡張させたりするための物質ですが、気管支喘息などのアレルギーを誘発する物質の1つでもあることが明らかになっています。
ザジテンはPAFのはたらきもブロックすることが確認されており、これによってもアレルギー症状を緩和させると考えられています。
Ⅳ.抗好酸球作用
アレルギー反応の1つに、アレルゲン(アレルギーの原因になる物質)によって好酸球の脱顆粒(好酸球が顆粒を分泌する)という現象があります。
好酸球から分泌される顆粒には様々な成分が含まれています。中にはヒスタミンやロイコトリエンなどのアレルギーの原因となる物質のはたらきを中和する作用もあります。
しかし一方で、炎症の原因となる物質も放出してしまい、これによってアレルギー反応がより悪化してしまう事もあります。
ザジテンは好酸球数を減少させ、また好酸球の脱顆粒を減少させるはたらきがあることが確認されており、これもアレルギー症状の緩和に役立っている可能性があります。
4.ザジテンの副作用
ザジテンにはどんな副作用があるのでしょうか。また副作用の頻度はどのくらいなのでしょうか。
ザジテンの副作用は3.36%と報告されています。眼局所にしか作用しないお薬ですので、副作用は多くはありません。
生じうる副作用としては、
- しみる
- 眼刺激
- 眼瞼炎
とほとんどが眼局所の副作用になります。
また眼の症状以外としては、
- 眠気
などの報告がありますが、頻度はまれです。
5.ザジテンの用法・用量と剤形
ザジテンは、
ザジテン点眼液0.05% 5ml
の1剤形のみがあります。
以前はザジテン点眼液UDという、防腐剤(ベンザルコニウム塩化物)の入っていない1回使い切りタイプもあったのですが、これは2016年で発売中止となってしまいました。
ザジテンの使い方としては、
通常1回1~2滴を1日4回(朝、昼、夕方及び就寝前)点眼する。
となっています。
実際は厳密に1日4回を点眼する必要はなく、ある程度柔軟に考えて頂いて問題ありません。
6.ザジテンはコンタクトレンズの上から点眼できるのか
点眼液を処方すると、患者さんから良く聞かれる質問があります。
それは「コンタクトを付けたまま点眼して大丈夫ですか?」というものです。
この回答は、
- 「ハードコンタクトレンズは大丈夫」
- 「ソフトコンタクトレンズはザジテンを点眼して15分以上待ってからコンタクトレンズを装着する事」
というのが答えになります。
ザジテン点眼液にはベンザルコニウム塩化物という防腐剤が含まれています。ベンザルコニウム塩化物はコンタクトレンズに吸着されてしまうことが知られており、これによってソフトコンタクトレンズを変形させてしまう事があります。
そのためソフトコンタクトレンズ装着時にザジテンを点眼する事はあまり推奨されません。
ただしザジテンを点眼してから15分程度待ってソフトコンタクトレンズを装着すれば、ベンザルコニウム塩化物はほとんど吸着されないという報告がありますので、どうしてもザジテン点眼液も使いたいし、コンタクトレンズもつけたいという場合は、このように点眼後に少し待ってからコンタクトを装着するようにすると良いでしょう。
7.ザジテンが向いている人は?
以上から考えて、ザジテンが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。
ザジテンの特徴をおさらいすると、
・眼に生じたアレルギー反応(充血やかゆみなど)を抑える作用を持つ
・ヒスタミンをはじめ、その他のケミカルメディエーター・好酸球のはたらきを抑える
・局所(目)にしかほとんど作用しないため、副作用が少ない
といったものがありました。
ザジテンはアレルギー症状を抑える目薬で、古くから発売されているため、使い慣れている患者さんも多い抗アレルギー点眼薬の1つです。
昔から使っているという事で、根強い人気がありますが、最近の新しい点眼薬と比べると効果の良さでやや劣る面もありますので、処方される頻度は徐々に減っていっている印象を受けます。
もちろんザジテンで問題なく症状の改善が得られているという方であれば、今後も使用して問題ありませんが、最近は新しい抗アレルギー点眼薬も多く出てきていますので、効果不十分と感じられる方は、新しい点眼液を試してみても良いかもしれません。
また点眼液は眼のみに作用し、体内にほとんど吸収されないため、眼だけにアレルギー症状が生じている際には良い適応となります。
反対にアレルギー症状が目だけではなく、鼻水も出たりと症状が多岐に渡る場合は、飲み薬を服用するなどして、全身にお薬が効くようにした方が良いでしょう。